会社というものはなかなかに難しいし、ほとんどはコミュニケーションに左右される。会社というものを理解していない人もいて、そういう人にあたると薬の量が増えてしまう。

会社は学校ではない

会社というものは志を同じくする人たちがそれぞれ得意な分野で分業をすることで、みんなで儲けようという組織である。日本では高校や大学を卒業すると会社に就職することが一般的だし、新卒一括採用の文化が根強いので、学校の延長線上に会社があるように錯覚しがちだが、組織としての性質はまったく異なる。

そうした中で新卒ならまだしも、10年近く働いているにも関わらず、まだ教えてもらって当たり前だと思っている人がいる。うーん厳しい。すでにあなたは教える側に立っていないといけないはずなのに。あまりにも初歩的な抜け漏れを指摘したらこっちがイジワルをしているみたいに見えてしまうではないですか。

お前の仕事は?

自分が考えていることを言語化できない人は思いの外多い。「なんかいい感じに」とか「システムで解決できませんか?」とか「〇〇と同じ」とか「生成AIで…」のように、概念が持つ特徴や制約をうまく表現できず、人や仕組みが答えを与えてくれるまで待っている。

こうなったらもう企画や設計という段階ですらなく、ただの思いつきである。ちょっと考えてみますといった次の瞬間にはもうお前の仕事と言わんばかりで、アホな夢を語る横で誰かが辻褄合わせするための泥臭い仕事をしていることに気づいていない。

そのために最近はコンサルティング業なんかが幅を利かせてきていて、カウンセラーよろしくいろいろお話しを聞いてくださって仕様をまとめてくれるのだが、この世の中は自分ができないことに関してはお金を払うようにできているし、払ったところで自分の完全な理想形でないことも多い。それで一丁前に文句だけは言う。

自己投資の大切さ

もちろん私にも新卒のときがあったのだが、最初に案件を任されたときに「お前はなにも知らないのだから、まず勉強しろ」と言って上司が関連する技術の分厚い資料を渡してきた。なので今でも分からないことが出てきたら勉強するというのは当たり前だし、その上司でさえわからないことは業務中であっても勉強していた。今考えるとかなり余裕のある職場だったなあとも思わなくもない。

今やライフ・ワークバランスが重要視されてプライベートと業務は分けるのは当たり前だし、休日までやれやなんて絶対に言えないが、それでも自己投資のための勉強は重要だ。自分の価値を上げてより高い給料をもらうには、わからないことを減らしてもっと高度な仕事をこなしていかなければならないはずだ。ハンターになって巨獣を狩ったり、イカやタコになってインクを塗り合ったりしているだけの休日を過ごしているだけでは成長がない。

ああああ!

そうだ、もう支配される特権を与えるしかない。そこでいつも思い出すのが「ふたりのランスロット」だ。ゲーム「タクティクスオウガ」の名シーンのひとつだ。

聖騎士ランスロット1
「力で人を縛り付ける、そうしたローディスのやり方に問題がある、…そうは思わないのか?

暗黒騎士ランスロット2
「縛り付けた覚えなどないな。彼らは力で支配されることを望んだのだ。

聖騎士ランスロット
「望んだだと?

暗黒騎士ランスロット
「そうだ。…世の中を見渡してみろ。どれだけの人間が自分だけの判断で物事を成し遂げるというのだ?自らの手を汚し、リスクを背負い、そして自分の足だけで歩いていく…。そんなヤツがどれだけこの世の中にいるというのだ?

聖騎士ランスロット
「………………………。

暗黒騎士ランスロット
「…貴公らの革命を思い出してみよ。貴公らが血を流し、命を賭けて守った民はどうだ?自分の身を安全な場所に置きながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?

聖騎士ランスロット
「彼らは自分の生活を維持するだけで精一杯だったのだ…。

暗黒騎士ランスロット
「いや、違う。被害者でいる方が楽なのだ。弱者だから不平を言うのではない。不満をこぼしたいからこそ、弱者の立場に身を置くのだ。彼らは望んで『弱者』になるのだよ。

聖騎士ランスロット
「ばかな…。人には自分の人生を決定する権利がある。自由があるのだ!

暗黒騎士ランスロット
「わからぬか!本当の自由とは誰かに与えてもらうものではない。自分で勝ち取るものだ。しかし、民は自分以外の誰かにそれを求める。自分では何もしないくせに権利だけは主張する。救世主の登場を今か、今かと待っているくせに、自分がその救世主になろうとはしない。それが民だッ!

聖騎士ランスロット
「人はそこまで怠惰な動物じゃない。ただ、我々ほど強くないだけだ。

暗黒騎士ランスロット
「……聖騎士よ、貴公は純粋すぎる。民に自分の夢を求めてはならない。支配者は与えるだけでよい。

聖騎士ランスロット
「何を与えるというのだ?

暗黒騎士ランスロット
「支配されるという特権をだッ!

聖騎士ランスロット
「ばかなことを!

暗黒騎士になろう

はじめてタクティクスオウガをプレイしたときには聖騎士ランスロットが言っていることが正しいと思っていた。聖騎士だからだ。騎士道と光の道を修めた人の言うことが間違っているわけはない。そう思っていた。

今は違う。資本主義では暗黒騎士ランスロットこそが正しいのだ。文句を言い続けるよりもさっさと動いた者のほうが強いし、誰かを救うよりも答えを与えてしまった方が楽だし儲かる。のしあがるには怠惰な人間をやめることが最大の近道だ。

我が家の家訓に「働かざる者喰うべからず3」とあるが、文句を言うより先に手を動かせ、これは真理なのである。

足りないのは職位だけだ。あとは支配されるにしても大人しくしていてほしい。

Footnotes

  1. 本名ランスロット・ハミルトン。伝説のオウガバトルでは旧ゼノビア王国の騎士で最初に加入する固有キャラクター。神聖ゼテギネア帝国崩壊後は新生ゼノビア王国の聖騎士団団長となる。タクティクスオウガでは表向きには国外追放受けてヴァレリア島を訪れたが、実際には国宝である聖剣ブリュンヒルドを取り戻すという密命を受けていた。アラインメントは秩序。

  2. 本名アルフォンス・レーエル。タクティクスオウガ外伝の主人公で、聖炎騎士団の騎士。オウィスの内乱を治めたのち、ローディス教国に渡り教皇からランスロットの名を賜る。タクティクスオウガでは暗黒騎士団ロスローリアンの団長で、司祭ブランタの派遣要請に応じてヴァレリア島に渡った。アラインメントは秩序。

  3. ほかに「農協とGMOには関わるな」がある。