今年も爆安おせちがやってくる

ここ毎年は涼しくなってくるとテレビではジャパネットのおせちのコマーシャルが流れ始め、他社と比較しても圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれる。記憶違いでなければ早期予約で1万円引きに加えて蕎麦も付くという内容だったはずだ。

同社のおせちは内容的にも悪くないし、おそらくほかの多くのどれかを選ぶよりも満足できるとは思うのだが、他社のおせちが出揃う前に決めてしまうのはあまりにも風情がなさすぎて注文したことはない。最終的には去年のおせちの反省を活かしてああでもない、こうでもない、と悩みつつ選ぶのだが、それで満足できたかと問われると、これまで半分くらいは悔しい結果になっていて、ジャパネットにすべきだったか?と冗談混じりに思うことがある。

そんなジャパネットのおせちが有利誤認1にあたるとして、先日当局の指導を受けたことがニュースになっていた。

ジャパネットの言い分

  1. 消費者庁のガイドラインでは「過去に販売した価格」を比較対照に用いることが認められています。当社はこれに則り、キャンペーン直前まで「通常価格29,980円」で販売しており、表示に適切な根拠があったと認識しております。
  2. 2022年、2023年は同キャンペーン終了後に通常価格で販売をしております。2024年も同様の販売計画でしたが、期間内に完売した時点で販売を終了しております。お客様に安くご購入いただける機会を公平に設けており、表示の正当性を失うものではないと考えております。また、早期予約キャンペーンの企画において、キャンペーン終了後に購入できなかったという事実は企画の趣旨に沿ったもので、お客様に誤解を与えてはいないと考えております。
  3. 当社は、一括大量仕入れによって在庫リスクを負い、メーカー様と共に企業努力を重ねることで、高品質な商品をお求めやすい価格でご提供することを基本方針としております。本件のおせちも、本来29,980円で十分自信をもっておすすめできる商品を、43万個という規模の仕入れにより19,980円の価格でご提供したものです。本来は、29,980円相当のものを企業努力で値引きを実現しております。(後略)

公正取引委員会の言い分

  1. (前略)「値引き後価格」と称する実際の販売価格が当該将来の販売価格に比して安いかのように表示していた。
  2. 本件商品について、当該セール期間経過後に当該将来の販売価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画はなかったものであり、ジャパネット通常価格は将来の販売価格として十分な根拠のあるものとは認められないものであった。

所感

確かにジャパネットの言い分はもっともである。キャンペーン前に通常価格で販売している実績があるし、2022年と2023年は通常価格での販売はあったが、2024年は需要増加で完売したということだろう。消費者に対して誤解を与えていないのは確かだ。私もこれだけ聞くと素晴らしい企業努力の結果と思わざるを得ない。しかし、この販売方法には穴がある。

  • 2022年から2023年にかけて需要が増加していることを把握しており、2024年ではキャンペーン期間中に売り切れることが予測できていたとしたら、消費者にとっては実質10,000円引きで購入でき、競合他社に対して有利な状況だったと言える。
  • おせちは季節性と注文期限のある商品なので、競合が販売受付を終了する頃まで、または十分な期間をキャンペーン期間にすることで通常価格が意味をなさなくなる。もし早期にキャンペーンを終了することで当局の指摘を避けることも考えられるが、他社に対する競争力を失ってしまう。

つまり、商品的な制約を利用して通常価格を無意味にすることでキャンペーン価格で売り切ることができるのであれば、消費者にとってはキャンペーン価格がすなわち通常価格になってしまうので、有利誤認にあたるということなのだろう。

おそらく、ジャパネットたかたにとってはマーケティングの一環でやっていただけで、思いがけない話だったとは思うが、悪意を持ったほかの企業が同じ手口を使った商売をしないように、あらかじめ釘を刺しておくための見せしめとなったと表現することが妥当なような気がする。

ではどうすればいいのか?と少し考えてみたが、やっぱりおせちという商品の性質が邪魔をする。キャンペーン期間にあわせて先着制も導入すると、先着分が売り切れたあとの商品の競争力に疑問が残る。キャンペーン中に値下げするのではなく内容を豪華にすれば価格表示については回避できるが、やりすぎると摘発対象になりかねない。なのでそもそも企業努力で安くできるのであれば値引きをしなければよかったのではないかとも思うが、キャンペーンを設定して早期に注文を確定させることは、需要を確定させて物流のコストを下げるために重要である(が、今回の指摘はそこを追及しているものではない)。

あるいは文化的なところに目を向けると、年末にかけておせちの価値を最大化して、年が明けた瞬間に無価値としてしまう我々消費者にも原因の一端があるのかもしれない。

Footnotes

  1. 実物や競争相手と比較して、著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの。