もし虹走氏が見つけたときのメモ

この日記のことはそっとしておいてください。

ずっと前にAmazonのポイントが余っていたか、セールだったかは忘れてしまったが、購入して一度は読んだのだが、また読み返したくなったので表題に至る。作者である虹走にじばしり氏は𝕏で夫婦のノロケ話を投稿しており、毎度ほっこりするエピソードで楽しませてもらっている。

中にはこんな奥さんは存在しないだとか、妄想乙のようなことを言う人も見かけるが、そこは嘘でも本当でもちょっとした日常の楽しみであってほしいので、個人的にはどちらでも構わないが、できれば本当であってほしいと思っている。氏の作品はゲーム好きな奥さんこと「Uちゃん」さんとの日常を描いたものがほとんどを占め、自身のブログゆうメンタルクリニックで連載されている。わざわざ見に行かなくても𝕏でフォローすればおのずと目に入るようになる。

僕と壊された初恋はその前日譚とも言える作品で、初恋相手のKちゃんと出会う中学生時代から妻であるUちゃんさんと結婚を前提に交際を開始するところまでが語られており、思春期特有の出会いと別れや、家庭や家庭間のいざこざ、長くこじらせた初恋、そして妻との出会いがリアルに描かれている。第2巻では虚言癖があるSさんに振り回される描写が多く、若干ダレがちではあるものの、青春の思い出話としては読み応えがある。

同窓会をやってみたい

私の学生時代といえば、小学校で好きになった同級生と高校で再会してしまい、若干こじらせてしまったのだが、進学後は特に会うこともなく、就職後地元で一度だけそれっぽい人を見かけたくらいで、その後自分の人生と交わりはない。そう考えると人との付き合いというのは偶然のめぐり合わせであり、そのときは同じ学校や職場といった関係を維持する理由があるから付き合いがあるのであって、それがなくなれば数ヶ月後にはやりとりをしなくなっていることだって十分にあり得るのだ。

小学生のころ、出張した担任の代わりに隣の組の先生が代理で来た。どういう話の流れか忘れてしまったが「俺が今日このクラスに来たのはお前たちとたまたま交差点で巡り会っただけの話で、この先交わることはない」とちょっと子供にとっては難しい話をしてくれたそのままだと思うし、サイバーパンク 2077のミッチ・アンダーソンも主人公との出会いについて「偶然のめぐり合わせさ。少しの間、俺たちの道は交わった…それだけだ」と言っている。

しかし、一度は巡り会った者同士ではあるので、ほかの同級生も含めて、今になってそれぞれがどういう人生を歩んでいるかは多少なりとも興味があるし、ここで一度同窓会をやってみたいとたまに思うことがある。学生時代には何回か同窓会があったようだが、コミケがあるからと予定を蹴り続けていた人間がいまさら望んでいいことでもないと思う。

コミュニケーションの魔力

虹走氏が参加していた掲示板サイトがどんなものだったかは具体的に描かれてはいないが、私の場合はこれがMSN Chatだった。今考えるとあのMicrosoftがチャットサイトなんてものを運営していたことに驚く。技術的にはIRC(Internet Relay Chat)をエンタープライズ向けにカスタマイズしたもので、GateKeeperPassportという独自認証基盤と組み合わせたものだった。クライアントはWebブラウザを想定していて、Active Xプラグインで動作した。Redditにスクリーンショットも投稿されている。

私は学校の友人からこれを紹介されて、あっという間にのめり込んだ。親がルーターの設定をいじってインターネットの利用時間を制限するのも頷ける。さいわい学力が落ち込むほどではなかったが、部活と宿題をしている以外の時間はほぼチャット漬けの毎日だったことを覚えている。

「こん どこすみ?」は共通の挨拶だったし、少しROMをしていると面白くないやつと思われてキックされているなんて日常茶飯事。特に話題なんてものはないのだが、話題がないなりにチャットログは流れていく。それでもパソコンの画面の向こう側にいる人たちとの交流は楽しいものだった。いつもの時間にいつものメンバーが集まればそれだけで楽しいし、たまに新しい人との出会いもあった。多感な年頃にとってはこの偶然がとても刺激的だった。

チャットにはいろんな人がいた。大検を目指すから高校には行かないと言っていた彼、チャットレディ、22歳で結婚した姉貴分、名前の両側に†をつけていた荒らし部屋常連の大学生。結構ワケありな人が多く定着していたようにも感じられるがそんなものは関係なかった。

中期~後期にかけてはチャット人気が落ち込んでいったことと、パスワードクラッカーをはじめとしたシステム的な脆弱性を突いた荒らし用ツールが出回ったこともあったのか、利用者が減ってきてそのうちサービスが終了した。私も荒れていくサービスに嫌気がさしたことと学業が忙しくなったこともあり、次第に寄り付かなくなっていった。

この教訓からMMO RPGに手を出すことはなかったが、大学に行くとラグナロクオンラインで浪人するところだったという同級生やFinal Fantasy IXで留年したという先輩もいたので、コミュニケーションの面白さというのは魔力をもって人を惹きつけるようだ。

偶然のめぐり合わせ

私の学生時代は僕と壊された初恋ほどの作品にできるイベントはなかったものの、振り返ってみるとさまざまな出来事が思い出される。大体は恥ずかしい黒歴史だが、その偶然のめぐり合わせの果てに今の生活があるのだし、社会人になると思いのほか新しい出会いというものは少なくなるのだと実感する。これはそんなことを思い返す機会を与えてくれる作品だった。