ここまでコードに関することが多かったので、少し息抜きがてら別の話をしましょう。今回は法律や公序良俗に関してです。

身内向けのDiscordボットを作成している際にはあまり考える必要のないことですが、不特定多数に対して公開するときには、やはり法令に則ったアプリケーションでなければなりません。

他者の権利を侵害しない

著作権

権利の侵害と言ったときに身近なものには著作権があるでしょう。学校教育で触れる機会もあり、端的に言えば「他者の著作物を盗用してはならない」というものです。基本的にはこれに則るのですが、いくつか制限もあります。

  • 私的利用は条件により許可されることがある
  • 引用は正当な範囲内で許可されることがある (分量はおおむね記事の 以下)

昨今では生成AIの登場によって著作物の引用や学習利用が話題になっていますが、著作権法含めた法律というものは単純なものではないので、感情的な世論や主張に振り回されないためにも、関係しそうな分野の法律は抑えておくといいでしょう。

法律の考え方

法律は国民が守るべき規則ではありますが、やってはいけないから規則があるのではなく、本質的には誰かや公共の利益を守るために存在しています。著作権であれば考案者の経済活動を妨害しないためですし、酒税法は国の税収を維持するためです。その法律ができたなにかしらの理由があるのです。

個人情報保護法・GDPR

個人情報の取扱いに関しては興味深い話題となっており、多くの企業やプラットフォームが対応を迫られています。詳細は省きますが、身分証明書の番号または個人が特定できる個人情報を収集する場合に、その利用目的を通知または公表をしなければならないというものです。また、通知外の利用をする際には本人の同意が必要となります。

欧州では類似のGDPR (一般データ保護規則)が施行されており、EUからサービスが利用される場合にも適用されるといった、一方的かつ広く影響が及ぶ法令となっています。しかし、EUは日本に対して十分性認定を行っているので、基本的には個人情報保護法の個人情報の保護に関する…補完的ルールに則る限り、これが免除されます。

個人開発者はどうすればいいですか?

個人情報保護法違反については、個人に対しても罰則が規定されているので、これに従ってください。補完的ルールまで対応できない場合には、EUから(日本以外から)の通信を遮断することを検討してもいいでしょう。

個人情報を収集することはなるべく控えてください

理由はどうあれ個人情報を流出させてしまった場合には、個人情報保護委員会や警察等、しかるべき機関に対して個人情報が流出したことを届け出なければなりません。基本的にDiscord APIから取得できる以上のものを収集すべきではありませんし、その中でも必要なものに限るべきです。

公序良俗を守る

一般に公共の場にふさわしくないコンテンツは提供しないようにしましょう。

  • 成年向けコンテンツ
  • 年齢・政治・宗教・人種・人格・性別・性的指向への攻撃や差別、蔑視、軽視
  • 過剰なネットミーム・ジョーク・パロディ
  • 違法行為・脱法行為・海賊行為・誤解を招く行為

許容できる程度は人それぞれですが、その内容を家庭や会社内、見ず知らずの他人に対して話せるかどうか、をおおまかな指標とするとよいでしょう。

納税をする

この項目は冗談ではありません。もしあなたが作ったDiscordボットが大当たりし、収益が発生したら忘れずに確定申告をしましょう。しばしばメディアでも脱税が取り上げられますが、これは国民の三大義務のひとつにあるように、脱税は国の財政を脅かす重罪であるからです。

人によって納税の要件は異なりますが、確定申告についてはするだけはタダなのでやっておいて損はありません。わずかばかりですが、徴収されすぎた税金が返還されることもあります。

サービス提供に際して

利用規約

利用規約はサービスを利用する際の規則や適用範囲を定めたもので、ユーザーはサービスの利用において、それに従わなければなりません。基本的にサービスはオプトイン(ユーザーが利用できるかどうかを決めることができる)ですし、紛争に発展した際にサービス事業者が責任を負わされすぎないように、若干事業者有利に書かれていることが多いです。

利用規約に定められているからといって、ルール違反は即時の法的措置には結びつきません。悪質性が極めて高いか、再三の警告があったにも関わらず是正されなかったときに初めてそういった措置を執ることが一般的です。

事業者にとって免責事項や禁止事項を定めておくことは重要です。どういったことに対して責任を負わないのか、なにを禁止しているのかを明記しておくことによって紛争を避けることができます。特に個人開発のサービスであれば、利用に際して一切の責任を負わないと書かれていることは一般的ですし、例えばプログラミング言語のJavaでは核開発を禁じています

プライバシーポリシー

主にサービスを利用する上で、ユーザーのどのような情報を、どのような目的で、どのように使い、どこへ保存するのか、を定めたものです。個人情報保護法に準拠していれば、プライバシーポリシーの制定が必須となるので、ここでは詳細は省きます。

プライバシーポリシーの制定はDiscordボットを認証アプリとするための必須要件にもなっています。

ユーザー情報の保存先について

ユーザーの情報を保存するときには、なるべく暗号化に対応したストレージを採用しましょう。セキュリティを高めるだけでなく、ユーザーに対しても安心感を与えることができます。

暴対条項

近年では暴力団追放条例による取締りが強化され、暴力団員は強く経済的な活動を制限されるようになりましたが、それでも巧妙に社会に溶け込んで資金稼ぎをしています。

企業や個人事業主が締結するような契約書には通常暴対条項が盛り込まれており、互いに反社会的勢力でないことを確約しますが、エンドユーザー向けにこれを公表しているサービスはあまり見かけません。

近年は個人やサークルといった小規模な組織がビジネスに参画しやすくなり、実態が掴めないことも増えてきているので、ユーザーが反社会的勢力へ与するリスクを減らし、安心してサービスを利用できるようにするためにも、反社会的勢力でないことを表明しておくとよいでしょう。

大阪府警察のサイトには暴力団排除条項の記載例があるので、これを参考にサービスのどこかに記載しておけば、少なくとも社会的に悪い人間によって運営されてはいないことは伝えることができます。

第9回 ボットを公開する