親族に障害者になってしまった者がいるので、障害年金申請をすることになったのだが、当人が公文書を書くことに慣れておらず、自力での申請が難しいということなので、私が代理で人生初の障害年金申請をすることにした。
見れば見るほどに障害年金というのは情報が錯綜しており嘘か本当かわからない情報も多い。障害年金を真面目に検討しつつも何をどうしたらいいのかわからない人のためにも、今回私が申請するにあたって経験したことと感じたことをできる範囲で書き記した。
3行でわかる概要
- 障害厚生年金で申請
- 社労士は使わず自力で申請
- 想定どおりの等級で支給決定
タイムライン
- 2025年12月上旬:かかりつけ医より障害年金を検討してはどうか?と伝えられる
- 2026年01月下旬:最寄の年金事務所に相談をする
- 2026年02月上旬:かかりつけ医で診断書を発行してもらう
- 2026年02月中旬:年金事務所で必要書類を提出する
- 2026年04月下旬:追加書類の提出を求められる
- 2026年05月中旬:審査遅延のお知らせが届く
- 2026年07月上旬:年金証書が届く
年金事務所での手続き
障害年金を申請するにあたってまずやらなければならないのは最寄の年金事務所での相談だ。ここでは国民年金または厚生年金の納付状況を確認したのち、障害の内容を伝えると受給要件を満たしているかどうか教えてくれる。もし要件を満たしていれば、申請に必要な書類を一式渡されるので一旦は持ち帰って記入して、再度年金事務所を訪れて提出することになる。
申請書類の中でも重要なものが3つあり、それは医師の診断書と申立書、そして初診日証明だ。いくら医師の診断書があったとしても、初診日の証明がなければ年金を受給できない。人によっては転院を繰り返した結果、初診日の証明ができずに何年かかっても一向に年金が受給できないことがあるそう。
また、申立書は受給を望む本人または代理人が、初診日以前から現在に至るまでの経緯を記載するもので、文書慣れしていない人には要求水準が高いものとなる。特に精神障害で受給を目指す場合には、申立書を書く精神状況にないことも多いようなので、いっそう険しいものとなっている。
審査期間
SNSを見ている限りは最短2ヶ月で受給が決定していることもあるようだが、年金機構も逼迫しているようで平均して3ヶ月以上かかる。追加書類の提出を求められるとその間は審査が止まるのでさらに時間がかかってしまう。
申請をする際の手続き完了書類に審査状況の確認専用ダイヤルの電話番号が記載されているので、あまりにも時間がかかるようであれば確認のために電話してもいいかもしれない。とはいえ、同じ障害ひとつとっても人によって状況はさまざまであり審査期間は大きく異なる。落ち着かない状況が長く続くが気長に待ちたい。
なお、申請してから3ヶ月が経過すると機械的に審査遅延のお知らせが届く。
追加書類
医師の診断書と申立書の内容だけでは支給の是非および適切な等級が判断できないとされた場合には、厳正な審査のための追加の書類として日常生活及び就労に関する状況について(照会)を要求されることがある。
追加の書類を書くのはなかなか骨の折れる仕事で、申立書の内容をさらに補完できると考えることもできれば、ここでボロが出るかもしれない。しかし、照会があるということはその時点では年金機構側も決めかねているので必ずしも不支給ではない。世の中には質問に対して悪意を見出す人が少なからずいるが、これがゲームのルールなので、冷静になって淡々と処理すればよい。
よくある話題
社労士を使うか?
障害年金申請において社労士を使うことは議論の余地がある。ある人は使うべきだと言うし、ある人は自分で書いて申請が通ったと言う。答えのない議論だが、それは人や状況によるからで、人によっては無駄になるだろうし、また別の人にとっては天の助けにもなりうる。
社労士を使う利点は明らかで、これまでの経験や知見に基づいた適切な助言や手続き対応、高い文章化能力によって申請の通過率を高められることだ。成功報酬は2ヶ月分の障害年金に相当する額が相場で1、年金が支給されたら支払う成功報酬型であることが多いようだ。これは初回の振込分がほぼそのまま社労士への報酬となるということでもある。
社労士を使ったほうがいい人
自分は文章があまりうまくないとか、自分を客観視できないとか、まわりに賢い人がいないというのであれば2ヶ月分の成功報酬は決して安いものではないが、これまで培ってこなかった文章作成能力を単発で購入して、公用文書を作成する手間賃と考えれば高すぎることもない。
とはいっても社労士事務所の名声にも関わるので、成功報酬型であるということは申請が通る見込みのないものについてはお断りされるだろうし、お断りされたら自分でやるしかないので厳しい戦いを強いられるかもしれない。
社労士を使わなくてもいい人
社労士は入念な面談や聴取をしてはくれるだろうが、結局のところ血族でも親族でもない他人であり、日常生活を共にしているわけでもないので共通認識は持たないし、文章化するためのネタを提供しないことには高い文章化能力も活かし切ることができない。
その点、親族というのは便利なもので、一番その人を身近で観察している立場なので、そこに客観的な視点と文章化能力があるのならば自力で申請すべきである。下手に社労士に依頼することは安くない金を払ってまで自分を不利にすることにもなりかねない。
申立書を書くときのコツ
つらいという気持ち
障害年金について、気持ちの面は汲んでくれないとぼやいている人を見かける。その主張はわからないでもないが、気持ちといった定量的でないものは人によって程度が異なるし、言い出したらキリのない類のものだ。本人としては深く苦しんでつらい気持ちでいるとは思うのだが、これを日常生活における困難に変換して伝えなければならない。
つらいだけで申請が通るのであれば年金システムは成り立たなくなってしまうので、つらいという気持ちから何ができないのか、どういった介助が必要なのかという生活や就労の制限に置き換えて他人に伝わる形で説明することになる。
言い訳が立つか?
大人の世界は言い訳が立つかが非常に重要な観点となる。障害年金は労働者が納めている国民年金や厚生年金から支給されているので、財源からしても申請の内容として彼らに対して言い訳が立つようなものでなければならない。この一例は本人にとって非常に厳しい指摘にはなるが、これでは年金機構の職員からしても我々労働者にとっても、とても容認できる内容でないことは明らかだ。
年金機構の立場
SNSを観察していると障害年金申請は言葉尻を捉えて不支給の理由を探しているという言説があるようだ。例えば「~できる」と書くと不支給になるとか、照会文書が届いたからには支給させるつもりがないとか、年金機構に対する不満が募っているようだが、これは大きな勘違いである。
ゲームのルールを把握する
私からしてみればこれはゲームの認識が間違っているから負けているのであって、このルールに沿って勝てる試合をしなければならない。障害年金は基本的に医師の診断書と申立書による書類審査を採用しているので、診断書の内容が支給の基準を満たしていて、さらに申立書で診断書と矛盾なく内容を補完するようになっているのが最低要件だ。これができないのであれば前述のとおり社労士に依頼してもいいし、勝てる算段があるなら自分で勝負するだけのことだ。
物語を伝える
確かに「~できる」と書いただけではできるから不都合はないと判断されて不支給になるかもしれない。ものは言いようで、「~できるが、その反動で1日寝込んでしまう」とか、「~できるが、体力の回復に時間を要する」とか、抱えている不便や不都合を一連の流れを交えて多面的に説明しない限りは、質問に対して端的に答えただけになってしまう。中にはこうした失敗をした人もいるようだ。
Footnotes
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2026年の障害2級だと年額約85万円なので、成功報酬は14万円程度となる。 ↩