おことわり
この記事は中学生の性に対する認識の奇妙さを扱ったものであり、妊活や体外受精、不妊治療、およびそれらに関連する様々な選択や状況について言及するものではありません。
T先生が結婚した
私が中学生のときに社会科を担当しているT先生の名字が変わった。T先生は当時30歳で、授業はずば抜けてうまいというわけでもなく、かといってわかりづらいということもなく、いわゆる普通の教師であった。少なくとも社会科に興味がなく、成績が壊滅的だった私にとってはそこは問題ではなかった1。卒業文集はどこかに行ってしまい完全に記憶頼りだが、小柄な美人ではあったと思うし、純粋に適齢期だったのもあり、結婚は自然なことだと子供ながらに思った。
しかし、それを聞いた同学年の問題児たちは違った。結婚して名字が変わったと聞いたその日に「先生、初夜はどうでしたか?」などと廊下ですれ違いざまに聞いているのである。デリカシーがないにもほどがある。T先生は真面目な性格であったし、職業柄なのか、まさに前夜に致したのか知らないが、「そういうことは聞かない!💢」と嗜めていた。
初夜どころではない
一般的な家庭における中学生であれば、やらなければならないことは勉強と部活程度しかない。時間が経ち大人になってみてはじめてわかるが、外に出れば社会的役割を果たし、家に帰れば炊事洗濯子育てといった家庭的な役割が待っている。子供の考えが及ぶ以上にやるべきことは多い。T先生だってどんなクソガキ相手であっても次の授業の前準備や事務的な処理、テストがあればその採点をしていたに違いないし、その上で新婚生活を成り立たせるための家庭での苦労があったことは想像に難くない。
なので、初夜を男女が結婚した最初の夜、と原義そのままで捉えれば暇であるはずがない。ましてや平日だった。T先生が結婚前から同棲していたのかどうかは知らないが、共同生活が始まればセックスより優先すべきこととしてなにより引越し、新しい生活への適応、名義変更等や契約変更の各種手続きが目白押しだ。素振りは見せなかったが、T先生は夫側の姓にしたので、それなりに忙しかったことが推察される。
しかし、箸が転がってもおかしい感受性豊かな中学生は違う。自分たちがまだ知らないセックスというイベントに興味津々で、身近な人間が近々でセックスをしたかもしれないこと自体が面白いのである。多感な時期は人がなにか新しいことをやるとそれを知りたくて仕方ないのだ。
みんな大体ヤってる
なにかの折に母が保護者のための性教育セミナーに参加したようで、家に帰ってくるなり、「『街中で手を繋いで歩いている男女は大体ヤってる』って講師の先生が言ってた」と話してくれた2。当時の私は高校生くらいだったと思うが、そういうものかと思ったし、まあ確かに手だけとはいえ肉体的な接触をよしとしているわけだから、大人になった今でもそれは何ら不思議ではないと捉えているし、特別変なことでもないとも思っている。
2020年にはとある声優が結婚を発表した際に、いちファンが「もう手とか繋いだりしてるのかな」とインターネット上に投稿していたが、相当の箱入りで身持ちが固いか、機会的な都合か、宗教的な事情でもない限りは3、結婚するほどの関係性が醸成されているわけで、手どころか大事な部分もそれはもう何回も繋がっていると考えることが妥当だ。人間だって動物であるからしてセックスのひとつやふたつは当たり前だ。
今年11月にも妊娠を公表したVTuberに対して「中出しされたんですか?」とメッセージを送るユニコーン4がいたが、「人工授精で授かったので中出しされてないです」と否定し、その皮肉ともとれるうまい返しに唸らされた。
学校と性教育
たまにテレビでも最近の性教育事情が報道されることがある。先日見たのはコンドーム会社の社員がやってきて模型を使って具体的な装着の方法まで教えていた。身近な先生ではなく外部講師を使うことで、冷やかしもなくビジネスライクに対応できるところもいいのかもしれない。これまでは「避妊は大事です」と口では言いながらも誰をやりかたを教えてくれないのは不思議であったが、こうした秘密主義的だった教育から前進しているようにも感じる5。
また、「先生は何回セックスしたことあるの?」という素朴な質問をする場面も映されていて、想定質問ではあると思うのだが、先生たちはみな既婚者でありながら答えに苦慮していた。自分が仮に子持ちの既婚者として聞かれる立場だったらなんと答えるかを考えてみると、なかなか興味深い話題でもある。
想像に任せるとか、両親に聞いてみろとか、大人になってみれば分かるとか、質問を逸らすことはできるが、これでは子供の興味に答えることができていないし、かといって真正面から受け止めて具体的に何回セックスしたのか?を答えるとしても悩ましい。回数を数える競技ではないし、例えば100回すれば税金の控除の対象になるわけでもない。今までに食べたパンの枚数を覚えていないように、エロ同人みたく正の字で記録でもしていない限り6、人間の記憶は当てにならないので、感覚でしか答えることができない。
じゃあ一体何回ヤったんスか?
先生たちや両親が教えてくれないのであれば、なにか近しい値を求めるしかない。そこで適当でもいいので、確率的に答えることを考えてみた。体の相性や年齢、精子や卵子の質も影響するが、調べたところ、健康な妊娠適齢期の男女であれば1周期あたりの自然妊娠率が20~25%らしいので、20%と仮定して妊娠するまでの周期数の単純なシミュレーションをした。単純な話で20%の確率で妊娠するのだから、 周期目で妊娠する確率は で求まる7。

すると10周期目で90%、14周期目で95%に到達する8。1年も妊活をしていればほとんどが妊娠するようである。生理を考慮してセックス可能な期間を1周期20日と見積り、そのままセックス可能回数の上限とすれば1~20回となるが9、前述のとおり大人はそこまで暇でもないし毎日体力も続くわけはないので、休日限定で1週間に2回とすれば、1周期あたり5~6回となる。
この概算に基けば、ほぼ確実に妊娠するまでには多くて50~70回のセックスをしていることになる。人間は娯楽目的でもセックスはするし、そのために避妊をするので、これよりもさらに多くなることは考えられるが、「先生は何回くらいセックスしたことあるの?」に対しては「数えていないけれど、確率的には50回以上」などとは答えられるのではないだろうか。まあ、それでも「覚えてないほどしたんですか、エロいですね」にはなるが、そもそもエロいことをしているし10、同時に数字的な根拠があるので説得力はある。
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
p = []
for i in range(20 + 1):
p.append(1.0 - (1.0 - 0.2) ** i)
plt.figure(figsize=(4, 3))
for y in [0.5, 0.90, 0.95]:
plt.axhline(y=y, color="#ff6666", linestyle="--", linewidth=1)
plt.bar(range(len(p)), p, color="#cccccc")
plt.yticks(np.arange(0, 1.1, 0.1))
plt.show()それよりも
抜けている観点があるとすれば、中学生はまだ見ぬセックスという人間を生産できてしまう面白くキモチイイという噂の行為に興味が惹かれているが、それが手段であることに気づいていないので、「何のためにセックスをして、それが 回というのは多いのか少ないのか?これを論じることに価値があるのか?」ということを考えさせるのもいいのかもしれない。
それに中学生の時点では「あいつ 回もセックスしたんだってよ」と冷やかすことはできるが、もしセックスに興味があり価値を感じているのなら、大人になるにつれて、回数 が少ないことは選ばれなかったオスまたはメスということになり、かつての冷やかしがそのまま未来の自分にブーメランとして戻ってくる。相手がいてはじめて成り立つイベントでもあるので、そもそも他人に選ばれる魅力的な人間にならなければいけない。
そうなると妄想で頭をピンクにしたり、ネットでユニコーンになる前に、部屋を片付けて、風呂に入って、身だしなみを整えて、コミュニケーションの仕方を学び、実際に身の回りにいる人たちと交流し、段階を踏んで行動を起こすほうが先ではないのか。でも、それは学校では性教育以上に教えてはくれない。
Footnotes
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おかげで大学受験まで苦労した。だって面白くないんだもの。 ↩
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今でも素晴らしい洞察だと感心している。 ↩
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ユダヤ教のある会派は結婚するまでセックスの仕方をしらないこともあるらしい。 ↩
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いわゆる処女厨。ガチ恋・妄信的・同担拒否・ナイト気取り・後方彼氏面などの属性が付くこともある。 ↩
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大きな責任と経済的な課題が生じうる行為に目を背けすぎではないか。 ↩
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よく太ももとかに「メスブタ」とかと一緒に書いてある。 ↩
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ソシャゲのガチャをやる人にとってはお馴染みの式。 ↩
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これを見れば若い時期に避妊しないことは数回であっても望まない妊娠リスクは高い。 ↩
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1日1試合を想定。 ↩
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お前も両親がエロいことをした結果生まれたのだ。 ↩