ふと最近 <b> タグについて聞かれて、そういえば <b> は bold の頭文字だったような、でも最近 <b> タグはあまり使わないなと思い、MDNで調べてみた。すると興味深いことが書かれているではないか。

<b> は HTML の要素で、要素の内容に読み手の注意を惹きたい場合で、他の特別な重要性が与えられないものに使用します。これは以前は太字要素と呼ばれており、ほとんどのブラウザーでは文字列を太字で描画していました。しかし、 <b> を文字列の装飾に使うべきではありません。太字の文字列を作成するには、 CSS の font-weight プロパティを使用し、特別な重要性を持つテキストを示すには <strong> 要素を使用してください。

つまるところ、HTMLの始まりの時代において <b> はテキストを太字で表示する役割が与えられていたが、HTMLが複雑になるにつれて、文書構造と装飾を分けるためのスタイルシート(Cascading Style Sheet: CSS)なるものが導入された結果として <b> の解釈に変化が起きた、というのが私の認識である。

今現在でも <b> タグで囲んだ要素は太字で表示はされるが、この定義に照らし合わせれば、「たまたま偶然にもブラウザが注目付け要素を太字で表示しているだけ」であって、誰も太字で表示すべきとは言っていないのである。

Markdownも同じ

MarkdownもHTMLと同じで、Markdown記法なるもので文書構造を与える。HTMLの <b> と同じような表示になるのは **強い強調** という記法だが、実際の表示がどうなるかはMarkdownエディタやビューワーに強く依存していて、太字になることもあれば、色が付くこともあるかもしれないし、下線やほかの装飾が施されるかもしれない。

ちなみにこの項の見出しである「Markdownも同じ」という部分は「見出しレベル1」で # で始まっている。デザインによっては見出しレベル1よりもレベル2のほうが文字が大きいということもあり得るし(あまりないとは思うが)、見出しレベルに応じて字体(フォント)が変わることもあるかもしれない。

装飾を期待しない

人は見栄えを気にするので、しばしば文書の構造的意味よりも装飾を期待してしまう。背景色が付いて見栄えがいいから引用ブロック > を使うとか、斜体になるから *強調* を使うといった具合に、しばしば手段と目的が入れ替わってしまう。

本来ならば強調部分を伝えることが重要であって、その部分が太字であろうと斜体であろうと構わないはずが、太字で伝えることが先行すると、それはもはや文書的な意味を持たなくなるし、太字が強調部分であるという文化的な前提に基づいた解釈に委ねることにもなる。

見出しにも同じことが言える。例えばWikipediaのちいかわのページは次のような構成になっている。

  • 概要
  • 世界観
  • 連作エピソード
  • 登場キャラクター
    • 主要キャラクター
    • サブキャラクター
    • 鎧さん
    • 討伐対象
    • その他

ここでは見出しレベル1から2までが使われており、「登場キャラクター」の項目を見ると、それ自体は見出しレベル1で、その細かい分類である「主要キャラクター」から「その他」はレベル2となっている。

このように見出しは文書に階層構造と順序を与えるものだ。単にデカい文字で表示したいから見出しレベル1にするとか、文字を小さくしたいからレベル3にするという話ではないし、大きな文字で表示されるかどうかはデザイン次第である。もしそういったデザイン的に気に食わない点があれば、文書構造を調整するよりも装飾を調整すべきである。

WYSIWYG

HTMLやMarkdownを手打ちする人からすれば、直接的に太字や打消し線を入力できるWYSIWYGウィジウィグエディタはその平穏を脅かす尖兵だ。文書構造を無視してはじめから装飾された文章やオブジェクトを入力してくるし、見た目さえよければそれでいいを地で行っている。

しかし、捉え方を変えれば、「なにを強調するか?」といった文書的な構造を考えるよりも、先に装飾をしてしまって、その箇所は強調したいところである、といったように逆の方向で装飾からあるべき構造を導き出しているということでもあるが、この方法による文書構造の決定は非可逆的であることに注意したい。

例えば、強く強調したい箇所が太字で表示されていることと、太字で表示されている部分が強く強調したい箇所であることは同じではない。後者において太字になっているのはデザイン的なものかもしれないし、あるいは強くない強調も太字になっていれば見分けがつかないからだ。

演習

この演習には答えがなく、文書構造と装飾について改めて考える機会を与えるためのものである。よって想定解も載せていない。

  1. ~~取消要素~~ 記法は取消要素で、すでに正確ではなくなった内容や、修正のために削除した内容を示している。この取消要素の装飾として考えられるものを挙げよ
  2. 近年は太字による強調だけでなく、色付き(しばしば黄色)下線による強調も見られる。これらの強調の意味的な違いを述べよ。また、その解釈は広く受け入れられるものかどうかも確認せよ
  3. Web文書で見た目のために改行をすることの是非について述べよ