式1.54
Aa=λa の両辺の形は、
Aa=a11⋮an1⋯⋱⋯a1n⋮anna1⋮an, λa=λa1⋮an
となる。式変形して、
Aa−λa=EAa−λEa=(EA−λE)a=(A−λE)a=0
が成り立つ。もし (A−λE)a に逆行列 ((A−λE)a)−1 があれば左からそれをかけることで a=0 を得るが、これは定義1.28に矛盾する。したがって A−λE の逆行列は存在しない。
定理1.29
a1,a2,⋯,an は一次独立でないと仮定すると、a1,a2,⋯,ak までは一次独立で、ak+1 を含むと一次従属になるような k (k<n) が存在する。このときある定数 c1,⋯,ck を使って、
ak+1=c1a1+c2a2+⋯+ckak(1)
と書けるはず (ak+1 は一次従属なので、一次独立の和として表現できる)。左側から A をかけて、
Aak+1=c1Aa1+c2Aa2+⋯+ckAak
さらに、Aai=λiai なので、
λk+1ak+1=c1λ2a1+c2λ2a2+⋯+ckλkak(2)
となる。(2)式に(1)を代入して、
λk+1(c1a1+c2a2+⋯+ckak)=c1λ1a1+c2λ2a2+⋯+ckλkak
さらに、右辺を左辺に移動して、
c1(λk+1−λ1)a1+c2(λk+1−λ2)a2+⋯+ck(λk+1−λk)ak=0
仮定より a1,a2,⋯,ak は一次独立なので、
c1(λk+1−λ1)=c2(λk+1−λ2)=⋯=ck(λk+1−λk)=0
固有値がすべて異なるので、c1=c2=⋯=ck=0 から、 ak+1=0 を得るが、これは固有ベクトルが 0 でないことに矛盾する。
定理1.31
P−1P=E より、det(P−1)⋅detP=1 なので、det(P−1)=(detP)−1 である。
固有方程式は det(λE−A)=det(A−λE)=0 であるので(0でさえあればいいので、入れ替えても同じ)、
det(λE−A)=det(λE−P−1BP)=det(λP−1EP−P−1BP)=det(P−1)⋅det(λE−B)⋅det(P)=det(P)−1⋅det(λE−B)⋅detP=det(λE−B)
より、固有多項式が一致する。同様に、
detA=det(P−1BP)=det(P−1)⋅det(B)⋅det(P)=det(P)−1⋅detB⋅detP=detB
である。
定理1.34 (前半)
a と b の複素内積は、tab と書けることから、
(Aa,b)=t(Aa)b
である。t(AB)=tB tA より、
=t(Aa)b=ta tAb
これを内積の形に変形して、
=ta tAb=(a, (tA)b)
である。先に転置しても後で転置しても値としては変わらないので、
=(a, (tA)b)=(a, t(A)b)
最後に定理1.24より、
=(a, t(A)b)=(a, A∗b)
定理1.34 (後半)
複素内積の定義と Aa=λaより、
∣λ∣2∣a∣2=λλ(a,a)=(λa,λa)=(Aa,Aa)
である。(Aa,b)=(a, A∗b) なので、
=(Aa,Aa)=(a, A∗Aa)=(a, a)=∣a∣2
∣a∣2=0 なので、∣λ∣2=1 つまり ∣λ∣=1
直行行列の場合
a∈R のとき、(Aa, b)=(a, tAb) である。定義1.24の A=A より A∗=tA、定義1.33より AtA=tAA、定義1.26より A tA=E なので、
∣λ∣2∣a∣2=λλ(a,a)=⋯=(a,tAAa)=(a, a)
複素内積のおさらい
tab=(a1,⋯,an)b1⋮bn=a1b1⋮anbn
である。なぜ複素共役を取るのかは1-1. ベクトルと行列を参照のこと。
定理1.35
Aa=λa とすると、定理1.34の (Aa,b)=(a, A∗b) より、
λ(a, a)=(λa, a)=(Aa, a)=(a, A∗a)
ここで、A はエルミート行列なので A=A∗ であることを利用すると、
=(a, A∗a)=(a, Aa)=(a, λa)=λ(a, a)
となる。λ=λ なので、λ は実数である。
定理1.36
正規行列であることの証明
まず A が正規行列のとき A−λE も正規行列になることを確認する。随伴行列の性質から、(A+B)∗=A∗+B∗ と (kA)∗=kA∗, k∈C は自明であるので、X=A−λE とおくと、
X∗=(A−λE)∗=A∗−λE
である。正規行列であることを示すには XX∗=X∗X であることを示せばいいので、それぞれを計算すると、
XX∗=(A−λE)(A∗−λE)=AA∗−λA∗−λA+∣λ∣2EX∗X=(A∗−λE)(A−λE)=A∗A−λA−λA∗+∣λ∣2E
2式の展開結果から AA∗=A∗A となるので、X=A−λE も正規行列となる。
内積を考える
式1.54より (A−λE)a=0 なので、内積をとっても 0 である。したがって、式1.65の (Aa, b)=(a, A∗b) と定義1.33の正規行列の性質 AA∗=A∗A を利用すると、
0=((A−λE)a, (A−λE)a)=(a, (A−λE)∗(A−λE)a)=(a, (A−λE)(A−λE)∗a)
ここで、内積 (a, Ab) を考える。
(a, Ab)=ta(Ab)=ta(tA∗b)=tatA∗b=t(A∗a)b=(A∗a, b)
であるので、
=(a, (A−λE)(A−λE)∗a)=((A−λE)∗a, (A−λE)∗a)
となる。これは ∣(A∗−λE)a∣2=0 であり、 a=0 なので、 A∗a=λa である。
固有値について考える
互いに異なる固有値 λi, λj に従属する固有ベクトルを ai, aj とすると、Aa=λa と (Aa, b)=(a, A∗b) そして今し方求めた A∗a=λa より、
λi(ai, aj)=(λiai, aj)=(Aai, aj)=(ai, A∗aj)=(ai, λjaj)=λj(ai, aj)
が成り立つが、λi=λj より、(ai, aj)=0 となる。