例1.15
A=2−11−12−1−110
対角成分に −λ を足して固有値を求める。これは単純な計算によるものなので、
====−λ(2−λ)2+(−1)+(−1)−(−(2−λ)−λ−(2−λ))−λ(2−λ)2−2+2(2−λ)+λ−λ(2−λ)2+(2−λ)(2−λ)(−λ(2−λ)+1)(2−λ)(λ−1)2
から、λ1=1 (重解)、λ2=2 となる。
ケース1
λ1=1 のとき、
1−11−11−1−11−1xyz=x−y−z−x+y+zx−y−z=0
である。これら3つの式は同じ x−y−z=0 であることを示しているので、x, y を2つのパラメータ s, t にすると、x=s, y=t, z=s−t なので、
p=sts−t
とできる。ここで、基本ベクトルを取り出すために (s, t)=(1, 0),(0, 1) とおくと、
p1=101, p2=01−1
となり、一次独立な2つのベクトルを作ることができる。すなわち、
p=s101+t01−1
である。
ケース2
λ2=2 のとき、
0−11−10−1−11−2xyz=−y−z−x+zx−y−2z=0
であり、x=−y, x=z である。同様にパラメータ化すると、
p=u−uu, u=1
であるので、
p3=1−11
となるが、定理1.29よりこれは p1, p2 と一次独立である。よって、対角化行列として P=[p1, p2, p3] をとれば、λ1=1, λ2=1, λ3=2 であるから、
P−1AP=100010002
と対角化できる。
一次独立の検証
定理1.29から一次独立のほかに、定理1.11に示すように、行列を変形して同じ行や列が生まれる場合には行列式が 0 になる性質を利用しても確認できる。
detP=10101−11−11=1+0+0−(1+0+1)=−1=0
であるので、p1, p2, p3 は一次独立である。
Pの逆行列について
P=10101−11−11
であるから、掃き出し法を使うと、
==10101−11−11100010001=10001−11−1010−10100011000101−1−110−1011001=1000101−1110101−100−110001000101110−11−1−1
となり、PP−1 を検算してみると単位行列になることがわかる。
PP−1=10101−11−1101110−11−1−1=100010001=E
定理1.40
前半
n 次方程式は少なくとも1つの解を持つので、少なくとも1つの固有値を持つ。それを λ1 として… (中略)、 P=[p1, p2, ⋯,pn] とおくと、Ap1=λ1p1 より、
AP=A [p1, p2, ⋯,pn]=Pλ10⋮0∗A′(1)
となる。これは固有値で対角化されることと、次の行列を計算することを考えることで変形を理解しやすい。
a11⋮an1⋯⋱⋯a1n⋮annp1p2⋯pn=Ap1Ap2⋯Apn=λ10⋮0Ap2⋯Apn
第1列以外はどうなるか見当がつかないので、これは最終的に ∗ と A′ という表現になり、適当な値となる。式(1)の右辺に左側から P−1 をかけると行列だけが残るが、これは P−1AP でもあるので、
P−1AP=λ10⋮0∗A′
である。式1.55と定理1.31より相似であるときは(対角化しても)行列式が一致することから、
det(A−xE)=det(P−1AP−xE)= λ10⋮0∗A′ =(λ1−x)det(A′−xE)
となる。この変形は定理1.14と、ある行または列を定数倍しても行列式の値が変わらない性質を利用している。
後半
A の固有値が λ1,λ2,⋯,λn とすると、A′ の固有値は λ2,⋯,λn となる。仮定により、A′ は P′ を用いて、
P′−1A′P′=λ2O⋱∗λn
となる。そこで、P の第1列を変化させないような行列として
Q=P10⋮00⋯A′0
を定めると、例1.3の (AB)−1=B−1A−1 を利用して、
Q−1AQ=P10⋮00⋯P′0−1AP10⋮00⋯P′0=10⋮00⋯P′0−1P−1AP10⋮00⋯P′0=10⋮00⋯P′0λ10⋮0∗A′10⋮00⋯P′0=λ10⋮0∗P′−1A′P′=λ1Oλ2⋱∗λn
となる。途中行列の計算があるが、第1行と第1列の計算では λ1 と ∗ が維持されると同時に 0 成分で P′ と A′ のみが計算対象となるので n−1 行列部分の積が計算できる。
定理1.42
実対称行列 A は直行行列 P を対角化行列として対角化できる。すなわち A=tA と P tP=E つまり tP=P−1 なので、P−1AP の転置をとると t(AB)=tB tA の性質より、
t(P−1AP)=tP t(P−1A)=tP tA t(P−1)=P−1A t(tP)=P−1AP
よって、P−1AP は対称行列なので、対角成分以外の部分も 0 となることから、対角行列である。
定理1.43
任意の正規行列はユニタリ行列を対角化行列として対角化できる。すなわち AA∗=A∗A と P∗P=E つまり P∗=P−1 なので、B=P−1AP とおくと、
B=b11Ob12b22⋯⋱b1nb2n⋮bnn, B∗=b11b12⋮b1nb22b2n⋱⋯Obnn
BB∗=(P−1AP)(P−1AP)∗=P−1AP((AP)∗(P−1)∗)=P−1APP∗A∗(P−1)∗=P−1AA∗P=P−1A∗AP=P∗A∗((P−1)∗P−1)AP=P∗A∗(P−1)∗P−1AP=(AP)∗(P−1)∗P−1AP=(P−1AP)∗(P−1AP)=B∗B
なので、BB∗=B∗B より、B も正規行列となる。BB∗ と B∗B の (1,1) 成分を考えると、
b11b11+b12b12+⋯+b1nb1n=b11b11
となるので、
∣b11∣2+∣b12∣2+⋯+∣b1n∣2∣b12∣2+⋯+∣b1n∣2=∣b11∣2=0
より、b12=⋯=b1n=0 となる。同様に (2,2) 成分を考えると、
b22b22+b23b23+⋯+b2nb2n=b12b12+b22b22
となるが、すでに b12 は 0 であることがわかってるので、
∣b23∣2+⋯+∣b2n∣2∣b23∣2+⋯+∣b2n∣2=∣b12∣2=0
であるから、b23=⋯=b2n=0 となる。最終的に (n,n) 成分を考えると、
bnnbnn0=b1nb1n+b2nb2n+⋯+b(n−1)nb(n−1)n+bnnbnn=∣b1n∣2+∣b2n∣2+⋯+∣b(n−1)n∣2
より、b1n=b2n=⋯=b(n−1)n=0 となるので、これまで 0 になった要素を考えると B は対角行列となる。
例1.16
対称行列
A=12−1210−101
の固有方程式は det (A−λE)=det (λE−A)=0 より、後者を使うと、
λ−1−21−2λ−1010λ−1=(λ−1)3−5(λ−1)=0=(λ−1)(λ2−2λ−4)=0
となるので、解の公式を利用して固有値は λ=1,1±5 である。λ=1 のとき (A−λE)x=(A−E)x=0 を解くと、
0−21−200100x1x2x3=−2x2+x3−2x1x3=0
から x1=0, 2x2=x3 となるので、x=0c2c を得る。この大きさが 1 になるようにすると、
02+c2+2c2=5c2c2c=1=51=51
である。したがって、x=51012 となる。また、λ=1±5 のときは、
±5−21−2±5010±5x1x2x3=±5x1−2x2+x3−2x1±5x2x1±5x3=0
から x=c±52c∓51c となるので、同様に大きさを1にすると、x=1015±2∓1 となる。λ1,λ2,λ3 を使って、
P=0515221102−10121−102101
である。P は直交行列なので、P tP=E であり、もとの行列を A とすると P−1AP は
10001+50001−5
と対角化できる。
直交行列であることの確認
P tP=E であることの確認をする。
0515221102−10121−1021010212151102−10252−101101=21+21202−202−201+201202−20251+104+10452−102−102−201+20152−102−10252+101+101=100010001
対角化の確認
P−1AP の計算をする。
P−1A=0212151102−10252−10110112−1210−121021121=0105+5105−5511025+21025−25210−5−110−5+1
なので、
P−1AP=0105+5105−5511025+21025−25210−5−110−5+10515221102−10121−102101=10001+50001−5
である。
解の公式の求め方
ax2+bx+c=0 から解の公式を導くコツは当たり前だが x=⋯ の形式にすること、つまり式中に現れる x をひとつにすることだ。いくつか方法は考えられるが、今回は因数分解の形を利用して、ax2+bx+c=0 は k(x+λ)2+m=0 に変形できるものとする。
この式を展開すると、kx2+2kλx+kλ2+m=0 となるので、最初の式と照らし合わせると、k=a, b=2kλ=2aλ, c=kλ2+m=aλ2+m となる。これを変形すると
λ=2ab, m=c−4ab2
となるので(ただし a=0)、
k(x+λ)2+ma(x+2ab)2+c−4ab2a(x+2ab)2(x+2ab)2=0=0=4ab2−4ac=4a2b2−4ac
となる。ここで両辺の平方根をとるが、左辺は正である一方で右辺は二乗して正になればいいので ± がついて、
(x+2ab)2x+2abx=4a2b2−4ac=±4a2b2−4ac=2a±b2−4ac=2a−b±b2−4ac
となり、解の公式が導かれた。なお、見てわかるように実数解が存在するには b2−4ac≥0 でなければならない。
式1.84
Bn=(P−1AP)(P−1AP)⋯(P−1AP)=P−1AnP は、B2 を考えると
B2=(P−1AP)(P−1AP)=P−1APP−1AP=P−1AAP=P−1A2P
となるので、n 次では P−1AnP となる。任意の多項式
f(x)=anxn+an−1xn−1+⋯+a0
に対して、P−1f(A)P は
P1f(A)P=anP−1AnP+an−1P−1An−1P+⋯+a0E=anBn+an−1Bn−1+⋯+a0E
である。三角行列 B の n 乗の対角成分は元の行列 B の対角成分を n 乗したものなので、
P−1f(A)P=anλ1nO⋱∗λnn+an−1λ1n−1O⋱∗λnn−1+⋯+a01⋱1=f(λ1)O⋱∗f(λn)
対角成分の累乗
三角行列の累乗は上三角部分を任意とすれば、対角成分が累乗になっていく。例えば 2 乗の場合には、以下のようになる。
λ1O⋱∗λnλ1O⋱∗λn=λ12O⋱∗λn2
例1.17
A の固有値を λ1,λ2,⋯,λn 三角化した行列を P−1AP とすると、
detA=det(P−1AP)=λ1λ2⋯λn
が任意の n について成り立つので f(A)=An とおいて、
detAn=λ1nλ2nλ3n=1n(1+5)n(1−5)n=((1+5)(1−5))n=(−4)n
定理1.45
B=P−1AP とすると、定理1.31より、P−1AP と A の固有多項式は等しくなる。B の固有多項式は
det(xE−B)=f(x)=(x−λ1)(x−λ2)⋯(x−λn)
なので、
f(B)=(B−λ1E)(B−λ2E)⋯(B−λnE)
となる。B−λiE は (i,i) 成分が 0 の三角行列であることに注意すると、(B−λ1E) は第 1 列が 0、(B−λ1E)(B−λ2E) は第 1,2 列が 0、(B−λ1E)(B−λ2E)⋯(B−λnE) は第 1,2,⋯,n が 0 になる。実際の例を示すと B−λiE は次のようになる。
B−λ1EB−λ2E⋮B−λnE=0Ob2⋱∗bn=b1O0⋱∗bn=b1Ob2⋱∗0
これらの行列を掛け合わせていくと、最終的に O になることがわかる。
例1.16
固有方程式は (x−1)3−5(x−1) なので、(A−E)3−5(A−E)=O となる。この式を移項して両辺に (A−E)n−3 をかけると、(A−E)n=5(A−E)n−2 となる。つまり、(A−E) を −2 乗するとその結果が 5 倍されるので、
(A−E)n=5(A−E)n−2=52(A−E)n−4=⋯=5k(A−E)n−2k
となる。最初の問いであった (A−E)99=5k(A−E)n−2k を計算するために n=99 として、右辺の行列計算部分が (A−E) となるように k=49 とすると、
(A−E)99=549(A−E)=54902−1200−100
が求まる。