定義
入れ替えると符号が逆転する
定義1.8より det [a1, a1]=−det [a1, a1]=0 となる。行列式があって惑わされやすいが、もっと簡略化すると X=−X=0 ということ。ai が 0 なのではなく、行列式が 0 である点に注意。
detって何?
文字通り determinant のこと。ここでは逆行列が存在するかどうかを判定するために使っているが、逆行列があると何が嬉しいのだろうか?ひとつ考えられるのは AA−1=E であることから、行列の除算ができるようになることだ。つまり、Ax=b があったときに、x=A−1b に変形でき、これは可逆性がある変化を適用できることも意味している。
2次の行列式
A=[a1, a2]=(acbd) のとき、a1=(ac), a2=(bd) であり、e1=(10), e2=(01) なので、基本ベクトルを用いると a1=ae1+ce2、a2=be1+de2 とおけて、
det [a1, a2]=det [ae1+ce2, be1+de2]=det [ae1, be1+de2]+det [ce2, be1+de2]=a det [e1, be1+de2]+c det [e2, be1+de2]=a det [e1, be1]+a det [e1, de2]+c det [e2, be1]+c det [e2, d e2]=ab det [e1, e1]+ad det [e1, e2]+bc det [e2, e1]+cd det [e2, e2]=ad det [e1, e2]+bc det [e2, e1]=ad−bc
n次の行列式
ai=a1ie1+a2ie2+⋯+anien として、2次のときと同様の計算をすると、
det A=k1=1∑nk2=1∑n⋯kn=1∑na1k1a2k2⋯ankndet [ek1,ek2,⋯,ekn]
となります。とあるが、まず det [ek1,ek2,⋯,ekn] について、k1,k2,⋯,kn の中に同じものがあるときはその値は 0 になることについて考えてみる。これは n 次の行列式の次の性質を使う。
a1,a2,⋯,an のうちの2つを入れ換えたとき、(−1) 倍する。すなわち、det [⋯,ai,⋯,aj,⋯]=−det [⋯,aj,⋯,ai,⋯]
この式で ai=aj であれば、同じものを入れ換えたわけだから、行列の見た目は変わっていないはずであるし、それにも関わらず符号が反転するのは 0 しかない。
順番は逆になったが、ai=a1ie1+a2ie2+⋯+anien=∑ki=1nakiieki であるので、a1 をこの式に置き換えると
det A=det [(k1=1∑nak11ek1),a2,⋯,an]
となる。ここで ak11 はスカラーなので係数として扱える。すなわち
det A=k1=1∑nak11 det [ek1,a2,⋯,an]=k1=1∑nk2=1∑n⋯kn=1∑nak11ak22⋯aknn det [ek1,ek2,⋯,ekn]
となる。このとき、k=k1,k2,⋯,kn が重複しない場合部分のみ残るので、
det A=k∑ak11ak22⋯aknn det [ek1,ek2,⋯,ekn]
が得られる。本と比較して行成分と列成分が入れ替わっているが、行列式は正方行列に適用するものであり、どちらを基準にしているかの違いでしかないので問題ない。
3次の行列式
A=[a1, a2, a3]=adgbehcfi のとき、
a1=ae1+de2+ge3a2=be1+ee2+he3a3=ce1+fe2+ie3
であるので、
det [a1, a2, a3]=det [ae1+de2+ge3, a2, a3]=a det [e1, a2, a3]+d det [e2, a2, a3]+g det [e3, a2, a3]=a det [e1, be1+ee2+he3, a3]+⋯=ab det [e1, e1, a3]+ae det [e1, e2, a3]+ah det [e1, e3, a3]+⋯
となる。展開された式に着目すると、k det [x1, x2, x3] の係数 k は ei の位置と i の値に依存していることがわかる。展開していくと項数が多くなるが、行列式内に同じものが含まれるとその値は 0 になるので、それらを消しつつ式を整理すると以下の表に示すもののみが残る。
| x1 | x2 | x3 | k | |
|---|
| e1 | e2 | e3 | aei | a11a22a33 |
| e1 | e3 | e2 | −afh | −a11a23a32 |
| e2 | e1 | e3 | −bdi | −a12a21a33 |
| e2 | e3 | e1 | bfg | a12a23a31 |
| e3 | e1 | e2 | cdh | a13a21a32 |
| e3 | e2 | e1 | −ceg | −a13a22a31 |
| したがって、3次の行列式は | | | | |
A=[a1, a2, a3]= a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32−a11a23a32−a12a21a33−a13a22a31
となる。
転置行列の添字を入れ替える
det tA=k∑aki1aki2⋯aknndet [ek1,ek2,⋯,ekn]
ここで aki1aki2⋯aknn の k1,k2,⋯,kn は 1,2,⋯,n の並び替えなので、積の順番を適当に入れ替えてみることを考える。とはいっても何がどうなっているのか視覚的にわかりやすいように行列を図示してみる。
A=ak11ak11⋮ak11ak22ak22⋮ak22⋯⋯⋱⋯aknnaknn⋮aknn
実際には列方向にはどれかひとつしか採用されないし、その添字が被ることもない。A は正方行列なので、この性質は行方向にも言える。したがって、添字を kn から in に変えても順番は変われど同じ成分を見ていることになる。
A=a1i1a1i1⋮a1i1a2i2a2i2⋮a2i2⋯⋯⋱⋯aninanin⋮anin
あとは証明に繋がり det A=det tA となる。
余因子展開
式1.14
式(1.14)の右辺を k1=1 と k1=1 のときに分けて書くと、
det A=a11∑a2k2a3k3⋯ankndet [e1,ek2,⋯,ekn]+k1=1∑a1k1a2k2⋯ankndet [ek1,ek2,⋯,ekn]
となる。a1k1,a2k2,⋯,ankn は第1列目で、k1=1 なら a1k1=a11 となる。2段目の式では k1=1 のフィルタ条件がついているため、a11 以外のものを見ていることになる。
ここで、k1=1 のとき a1k1=0 (第1行目の2番目の要素以降が 0)とすると、
det A=a11∑a2k2a3k3⋯ankndet [e1,ek2,⋯,ekn]
となる。ここで、{1,k2,⋯,kn} を並び替えて {1,k2,⋯,kn} にすることを考えると、1 は先頭に固定されているため、{k2,⋯,kn} の部分だけで決まる。簡単に言えば、e1 があってもなくても交換回数 m は変わらないし、単位行列の行列式の値は 1 であるので、
det [e1,e2k2,⋯enkn]=(−1)mdet [e1,e2,⋯,en]=(−1)mdet [e2,⋯,en]=(−1)m(1.21)
である。特に a11=1 として a2k2,⋯,aknn に着目すると以下の式に示すように、a2k2,a3k3,⋯,ankn は B の成分であることがわかる。
A=10⋮00⋯B0
定理1.15の証明
i=1 のときを示す。行列式の定義から
det A=a111a21⋮an10a22⋮an2⋯⋯⋱⋯0a2n⋮ann+⋯+a1n0a21⋮an10a22⋮an2⋯⋯⋱⋯1a2n⋮ann
とできる。これは
det [a1,⋯,ai+ai′,⋯,an]=det [a1,⋯,ai,⋯,an]+det [a1,⋯,ai′,⋯,an]
を使用するが、もっとわかりやすく書けば、ひとつの行または列について和で表現できるものは分割できるという性質なので、
t1=(a11, 0, ⋯, 0), t2=(0, a12, ⋯, 0), ⋯, tn=(0, 0, ⋯, a1n)
とすれば、行列式の積に関する定義
det [a1,⋯,xai,⋯,an]=x det [a1,⋯,ai,⋯,an]
から、上記の行列式に分解できる。また、元の式の右辺第 k 項に対して、列をすぐ左隣の列と 1 列ずつ入れ替えながら 1 が (1,1) 成分にくるように変形すると値は (−1)1+k 倍になる。i=1 のときは行方向も入れ替える必要があるが、さらに (−1)1+l 倍されるので同様になる。
行を交換するとマイナスになる
行列式の定義では行または列を入れ替えると −1 倍するという定義があるが、これを噛み砕くと隣り合う行または列を入れ替える操作をした結果 2k+1 回の交換が必要になって、結果として −1 倍になるということである。
入れ替えると −1 になる証明のために、2次の正方行列 A=(x+yx+y) を考える。これは det A=0 であるので、
det A=det(xx+y)+det(yx+y)=det(xx)+det(xy)+det(yx)+det(yy)=det(xy)+det(yx)=0
となり、det (xy)=−det (yx) である。