この記事は Obsidian Advent Calendar 2025の10日目の記事です。

9日目はhann-soloさんの「📘ものぐさObsidian:やる気ゼロで5年続けたノート術
11日目は同じく私PlasticHeartの「Obsidian Publishコトハジメ」です。

みなさんどうも初めまして。PlasticHeartと言います。この記事はObsidian Advent Calendar 2025という企画で書いた記事のひとつで、なぜ私がObsidianとObsidian Publishを使うのかについて、これまでの背景をあわせてつらつらと書き記したものです。私が何者なのかについてはこことかここをご覧ください。それでは始まります。

書いてまとめておきたい

私がインターネットを始めたころは、それほどウェブサービスが発達しておらず、Perl/CGIによる動的コンテンツがあちこちで草の根的にポコポコと芽を伸ばしてきている時期であった1。当時は掲示板やチャット、対戦型ゲームといったコミュニケーション主体のアプリケーションが好まれていて、個人の日記や主張、雑記のようなものはブログの普及までHTMLを手書きして公開しているような、そんな状況だった。手間なのにみんなよくやっていたと感心する。

しばらくしてPerlに代わって高機能なPHPが勢いを伸ばし、Wikiをはじめとしたナレッジプラットフォームが普及してきた。特にPukiWikiは仕組みもシンプルで癖もなく、ウェブ上で記事を編集して公開できるなんて便利にもほどがあったし、ブログのように古い記事が流れてしまうこともない。すこしPHPが書ければ素人でも簡単にプラグインが追加できて理想の仕組みに思えた。

なにか面白いことを書いて記録したいというフンワリとした思いはあったのだが、Wikiを作っては潰してを繰り返すこと数回、結局使わなくなってしまったのだ。今になって理由を考えると、私はWikiという仕組みに乗りたいわけではなく、不特定多数が編集できる必要もなく、そのためのサーバーを管理したいわけでもない。それに今ほど物事について考えることもなかったので、なにかを記録しておく必要もなかった。つまり脳内で完結していたのだ。

そんなことをしているうちに個人的な理由でPHPに疑念しか抱かなくなったのもあって2、PukiWikiすら嫌になり、結局ナレッジプラットフォームを選定すること自体をやめてしまったのだと思う。

天才博士「理想のものがなければ作ればいいんだぞい」

チッ うっせーな

SNSの到来

iPhoneが海の向こうからやってきた。誰もが1度は考えたであろう短文投稿サービスTwitterも一緒にだ。これまではいかに無料のウェブサーバーを確保して自分の意見を書き溜めていこうかを考えていたにもかかわらず、Twitterは利用料無料でバンバン意見を垂れ流せる。140文字という制限はあったが、それでもプラットフォーム側が責任持って蓄積してくれるのだから、あとで必要になったときに見返せばいいのだ。

だが人間そんなことはしない。見返したとしてもそこにあるのは140文字にすら満たない脈絡のない戯言が書きなぐられているだけで3、当時考えていたことなどとうに覚えていない。たったの140文字に知識や知恵を記録することはできず、文脈も省かれているので、当時の状況を正しく復元することも叶わない。私たちは短文投稿サービスの普及によって、その時々の意見を簡単に全世界に共有できるようになったものの、その背景や詳細情報を記録することをしなくなってしまったのだ。

備忘録として他人の投稿にいいねをつけていても、そのうちたくさんのいいねに埋もれて情報にアクセスできなくなることもあれば、その人がアカウントを削除して消失しまうこともあった。情報に対してメタ情報を付与できるわけでもないので、管理したくてもできない実情があったし、𝕏となった今でもそれは続いている。

文書作成プラットフォームの登場

私はソフトウェアエンジニアなので、技術方面にアンテナを張っていたのだが、あるときQiitaというプラットフォームが登場したのを耳にした。どうもそこは技術的な内容を主とした多人数参加型のナレッジ公開プラットフォームなのだそう。

早速アカウントを作成して色々試してみると、ページデザインがいいので適当に文章を書いてもそれなりの見栄えになるし、表記の揺れが激しいWikiと違ってMarkdown形式で記述できるし、シンタックスハイライトも綺麗だ。しかし、2本ほど記事を投稿したところでやめてしまった。

というのも、こういったプラットフォームの宿命でもあるのだが、最初は知識人や意欲的なユーザーが面白いことを投稿するのだが、次第に金の匂いをさせたビジネスアカウントや怪しいマーケターが金儲けのために参入してポジショントークを始め、最後にはどこかの企業のKPIや研修に使われるのか、採用活動を兼ねた質の低い記事が増えてくる。

また、マサカリという文化にも辟易するようになってしまったところもあり、そんないつ現れるかわからない当たり屋みたいなものに怯えた生活を送りたくもないと思うようになってきた。気にしなければいいだけの話かもしれないが、それでも強めの意見を頂戴するようなことがあればその日は布団に入るまでずっとそのことが頭の中でぐるぐるするだろう。

同時期に自由に投稿できるだけでなく収益化もできるnoteが現れた。しかし、あくまでも文章を投稿するためのプラットフォームであって、コードや数式を載せることに向いていないし、無理にそんなことをすればあとで管理が面倒になってしまう。せっかく収益化できるからと全文公開でカンパ(あるいはドネーション)の形を取っていたが、最終的な収益は¥200にとどまり、文字書きでお金を得ることの難しさも知った。

Qiitaの後釜としてZennが登場したときは正直嬉しかったし、知識を記録する楽しさを思い出させてくれた。投稿も意外と長続きして10本ほど記事を書いたが、それでも、ビジネスアカウントが増えてきてからはQiitaと同じ流れを辿っている。やはりここも理想郷ではなかったのかもしれない。

特に最近は生成AIの流行によって中身に乏しい記事が増えてきており、人間の独創性が作り出す面白さは失われてきている。同時にSNS化も進んできて、いかに表題で強い印象を与えられるかが勝負になってきているきらいがあり、人間の優れた技巧でもって技術に取り組む人たちの姿は霞んできている。

reStructuredText

こうした文章プラットフォームを試しつつも、それらに強く依存しない代替案を探っていたのだが、その中ではPython製の reStructuredText はわりと自分の理想に近いものだった。人を気にすることなく自分だけのナレッジをまとめることができるし、見た目からすればObsidian Publishとそう遠くもない。ただ、実際に使ってみるとわかるのだが、独自の構文を採用しているので、癖があって書きづらいMarkdownといった印象を受けた。

エディタのサポートが得られないところも難点で、作成している文章のできあがりがプレビューできないし、HTMLに出力するためには都度ビルドしなければならない。reStructuredTextに強い思い入れがなければ、運用に時間的コストが割かれることになるので採用は見送った。

Obsidian Publish

Zennで記事を投稿し始めてしばらく経ったあとに、技術に関係ないことも投稿したくなったのだが、Zennの投稿の区分としてTechかIdeaのふたつはあるものの、どちらにせよ技術的な内容しか認めていない。普段PythonやJavaScriptのことを書いている人間であっても、育てている唐辛子やサボテンのことも書きたくなることもあるし、社会人生活が長くなるにつれて、自分なりに見つけ出したコミュニケーションの答えを備忘録がてら記しておきたいこともあるのだ。

ここまで書いてきて少しずつ私のやりたいことがわかってきた。つまり私は、「面倒なホスティングやデプロイのことを考えずに、書きたいことを書きたいだけ」だったのだ。ついでにコードがハイライトできて数式が書ければ申し分ない4

話のオチとしてはもちろんObsidianに行き着くことになったのだが、これは意外にも自分から調べてたどり着いたわけではなく、家族から教えてもらうことになった。

どういうことかと言うと、とあるゲームコミュニティでは、主に文書をPDFでやりとりしているらしいのだが、ある人が編集の都合でObsidian形式5で配信したいと主張したらしい。是非はともかくそれを聞いた私は「Markdownだから表示はエディタのプレビューに依存するけどね…」と思いつつも、よくよく理由を深掘りしていくと、Obsidianのグラフビューやリンク機能がゲームブック的要素を満たしているし、ページごとにMarkdownを管理できるのでとても使いやすいんだそうな。なるほど、理にかなっている。

私の場合はそういう使い方はしないものの、こうして偶然知ったObsidianのMarkdownエディタとしての機能がかなり優秀であることを知る。なにもプラグインを入れていないバニラ6の状態でも十分な編集能力を持ち合わせている上に、ここから拡張もできるので驚きだ。

さらにローカルで文書を作成するだけでなく、それをウェブに発行するサービスがあれば便利なんだけどな…と思い、Obsidian公式の価格プランのページを見たところ、まさにそれが実現できるPublishプランを見つけた。

年支払いで$8/月という価格に半日ほど悩んだものの、金額的なところで言えば、国内レンタルサーバー(VPS)の価格は年々上昇してきており、今は最小プランでも大体600~800円/月なので、為替を無視して付加価値もあわせればPublishの価格は妥当なところではないかと踏んだので、とりあえず1年と思って契約している。

その後…

Obsidian Publishを使い始めてわかったのだが、期待どおりのことを期待どおりにできることが素晴らしく感じる7。どうか変な機能をつけたりプランを改悪したりしないことを祈るばかりだ。

デザイン面も優れているが、今のところサイトの見た目をガラリと変更するテーマのようなものはなく、ライトテーマとダークテーマといったカラーテーマの切り替えに留まるが、それもスタイルシートの知識があればある程度変更できるので、自分好みにしてみるのも楽しい。

私は既定のテーマに加えて次の変更をしているので参考までに:

  • 見出しのフォントサイズの変更
  • 既定のフォントファミリの変更
  • リンクアンカーとコードハイライト色の変更
  • 余白の調整
  • Twemojiによる環境に依存しない絵文字の表示

Obsidianもプラットフォームと言われればそれはそうなのだが、SNS要素がなく、自分が興味あることに集中できるので、内心は個人サイト時代に戻ったような感じで少しワクワクしている。気分はQiitaやZennという文明が滅んだあとに都市郊外の砂漠の岩窟で過ごしている隠者の気分だ8。とは言いつつも、ゆるい繋がりは欲しいようにも感じるので、Obsidian Publish Webringのようなものがあってもいいのかもしれない。

Obsidianの用途としては主にプログラミングの話題や日記を書きつつ、ネットニュースのスクラップ帳、ゲームの所感やメモ書きとして使っている。ほとんどは自分の知識の保管庫としての目的だ。Obsidianに書き出しておけば、忘れたとしてもまた見にいけばいいという安心感もある。これまではそういったものがなくても困らなかったが、今では「当時あのときのあの情報」にアクセスしたいこともあるので、あるとないとは大違いだ。

あとは理想を言えば、自分の知識を整理しているだけでなく、「ほかのどこで調べてもわからなかったものの、どっかのおじさんが公開しているブログの記事どおりにやってみたらうまく動いた」みたいな価値をこのObsidian Publishで提供できればいいんじゃないかなと思ったりもする。

なぜブログよりいいのか

ブログは日記として使用することが想定されているので、あとから編集して再度発信したり、昔の記事に素早くアクセスしたりというユースケースにはあまり向いていない。Obsidianの強みは一度書いた記事を時折読み返して洗練していくということにもあるので、そう考えると、昔に書いたものに素早くアクセスしたいという要求にブログは応えられない。

WordPressなら固定ページを作れるからいいじゃないか、という意見もあるが、事あるごとにセキュリティホールになるサービスを使うのは今のご時世やりたくないのが正直なところだ。家訓で農協とGM○(ジー・エム・まる)とPHPに関わってはいけないと言われている。

なぜメモ帳やTODOアプリよりいいのか

私はApple製品ユーザなので、メモ帳アプリを使っている。同じアカウントなら複数の端末で内容を同期できるし、ちょっとした買物のメモややりたいことのアイデアを書く目的なら便利だ。仕事でもやらなければならないことはいっぱいあるので、それを箇条書きにしてメモ帳で管理していたが、編集方法に癖があるし、階層的に知識を集約することが難しいので、つい最近になってやめてしまった。

メモ帳アプリのよくないところとしては、リッチテキストが必要ない状況でもリッチテキストを強要されるし、文字スタイルが一致していないとモヤモヤする人間にとってはストレスであることだ。もうひとつはこれは私の環境でのみ起きている事象かもしれないが、リッチテキストの宿命なのか、長期間同じメモの編集を続けていると内部データにゴミが蓄積して、変更に時間がかかるようになってくるのだ。

いっぽうでMarkdownは文字による整形という簡素な文書フォーマットを採用しているので、フォーマット固有の不具合を抱えにくいし、パソコンを使っていればマウス操作なしに整形された文書をすばやく書けるのは強い。

なぜWikiよりいいのか

多くのWikiはウェブ上で編集できて便利ではあるが、昨今のセキュリティ事情から、不必要にログインフォームを設置しておくのはセキュリティ上危険であるし、複数人で編集したいわけでもない。

私は手持ちの情報のほとんどをObsidian Publishで公開しているが、人によってはローカルで管理したい情報もある。同じことをWikiで実現しようとすると、ローカルサーバーを建てるか、ウェブに公開してBasic認証を設定する等考えられるが、サーバーを管理するのは少なからず手間で、設定漏れや環境の変化によって認証が動作しなくなることも考えられる。

Obsidianでは基本的にローカルで利用を想定しているし、必要に応じてSyncやPublishといった追加機能が使えるようになっているので、セキュリティの面でも安心だ。それに、万が一Obsidianがサービス終了したとしても、Markdown形式である以上は、なにかしらのテキストエディタや後釜となるツールとの互換性はあるわけで、ベンダーロックインの心配もない。

Footnotes

  1. KENT Webの掲示板やWeb拍手、箱庭諸島が流行っていた時期。

  2. 同業者には少なからず理解いただけると思う。

  3. (☝ ՞ਊ ՞)☝うぃーw

  4. 書いておいて欲張りかもしれないと思った。

  5. つまりMarkdown(.md)形式。

  6. プラグインを入れたりカスタムしたりしていないことをバニラ味に準えて言う。

  7. 最近のサービスは余計な機能をつけて金を要求してくることが多い。

  8. ポストアポカリプスものが好き。